照善寺について

照善寺は、島根県大田市仁摩町に建立された浄土真宗本願寺派の寺院です。平成二九(2017)、照善寺に伝わるご本尊・阿弥陀如来をはじめとする五尊(親鸞聖人御影、蓮如上人御影、聖徳太子御影、七高僧御影)を、本願寺の承継制度を通じて、当山にお迎えいたしました。

照善寺では、これまで山陰地方で数えきれない方がこの阿弥陀さま(お木像)とのご縁をいただかれてきました。照善寺のご住職が平成15(2003)年にご往生なされ以降は、代務住職を立てながら責任役員と総代の二名のご門徒さまが照善寺を守ってこられました。しかし、そのご門徒も平成25(2013)年にご往生され、代務住職が組や教区そして本願寺と協議をしながら存続の可能性を模索されました。しかし、過疎と超高齢化社会の限界集落にある照善寺は、平成28(2016)年4月、思いも虚しくその歴史に幕を閉じたのでした。

それが、どれほど辛い事実であったでしょう。「お寺はあるのに人が居ない」、この思いと、この度の私たちのように「人や思いはあるのにお寺がない」という思い…。それぞれのお寺の事情、事象こそ異なりますが、その根本に流れる心痛は同じです。「辛く悲しい現実」であったのです。

その思いを胸に、これまでわたしたち善楽寺は、ご門徒と住職家とが心を一つにして「善楽寺再建」という成し難い事業を、やり遂げることを目標としてきました。その事業がどれほど困難なことであったか、そのことは泣く泣く手放された照善寺のみなさまもまた、よくご承知されているに違い有りません。

 この度、心痛の相反する事象によって問題を抱えた二つのお寺が、不思議なご縁をいただきました。滋賀の米原の地に、これまで照善寺でお浄土へとお導きをいただいてきた、ご本尊さまをお迎えしたのです。

このお迎えは、その山陰の地域に生きられたご門徒の思いを込めた継承でもあります。歴史が途切れてしまった照善寺ですが、お護りいただいたご本尊さまは、今こうして善楽寺に継承され、今度は私たち善楽寺のご本尊となって、私たちを念仏の道に誘ってくださるのであります。それは、照善寺からさらに善楽寺をご教化くださる阿弥陀さまとなられたということです。

 それぞれの思いを護り、さらに伝え、共にお浄土への人生を歩ませて頂ければと思うことでございます。(平成二十九年十二月記之 文・田中真英)

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